2021年に気汚染防止法の一部改正が行われたことにより、私たちの住む住宅にもアスベストのより厳しい規制が適応されました。住宅を建てた年代によっては、アスベストが多く含まれているケースもあります。そのためリフォーム工事を依頼した際に、「アスベスト調査を行います」と言われることもあります。アスベスト調査は義務化されている調査ではあるものの、調査の内容や調査そのものに対する認知度が未だに低いままです。住宅のリフォーム工事や解体工事を検討している方は、今後アスベスト調査という調査を受ける機会もあるかと思います。そこで今回は、アスベストが及ぼす影響について解説をしながら、アスベスト調査について詳しくお話をしていきます。
アスベストってなに?
今はアスベストという言葉を聞く機会も減ってきました。そのため、アスベストと言われても、「なんのことか分からない」と疑問を持たれる方も増えています。アスベスト調査が実施されている理由を知るためには、まずはアスベストについて知っておく必要があります。ここでは、アスベストについて詳しく解説をしていきます。
◎参考:厚生労働省「アスベスト(石綿)に関するQ&A」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/sekimen/topics/tp050729-1.html
繊維状けい酸塩鉱物
アスベストの正体は、繊維状けい酸塩鉱物と呼ばれる物質です。天然に存在する繊維状の鉱物の総称で、非常に細い繊維が束になった構造をしています。目に見えないほどの細さの繊維は、髪の毛の約5,000分の1程度の太さとも言われています。「アスベスト」と呼ばれることの多い繊維状けい酸塩鉱物ですが、石綿と書いて「いしわた」「せきめん」と呼ばれたり表記されることも多いです。呼び方や表記に違いがあることもありますが、アスベストや石綿は同じ物質です。
保温断熱の目的で使用されていた
実はアスベストは現在使用禁止となっておりますが、禁止される昭和50年以前は保温断熱の目的として、建物に対して吹き付けて施工されていました。一般住宅には保温断熱が主な目的で使用されていましたが、スレート材や防音材として使われることもありました。昭和50年以降の住宅であれば基本的にはアスベストの心配は必要ありませんが、世代交代で住宅をそのまま引き継いでいる方や、引き継いだ住宅をリフォーム工事する方はアスベストが含まれた住宅の可能性が極めて高いため注意が必要となります。
アスベストが与える人体への影響とは?
ここまでで、アスベストがどんな物質なのか知っていただくことができたかと思います。昭和50年から禁止されたアスベストですが、これは単純に人体にとって悪影響があると分かったからです。時代とともに規制が厳しくなっていくアスベストですが、では実際にはどのような悪影響を及ぼすのでしょうか。アスベストが与える影響を知ることで、アスベスト調査がいかに重要かを知ることができますので、ここからは一緒にアスベストが与える人体への影響について見ていきましょう。
肺線維症(じん肺)を引き起こす
アスベストを吸い込んでしまうと、将来的に肺線維症を引き起こすリスクが高まります。肺線維症は、肺の線維化していく病気です。名前からは具体的な症状がイメージしにくいですが、アスベストの繊維が肺に蓄積して線維化を起こすことで、肺組織が硬くなります。灰が硬くなると呼吸が上手く行うことができなくなり、やがて呼吸困難を引き起こす疾患です。命にかかわることもあります。アスベストを吸い込んでからすぐに発症するのではなく、15年~20年という潜伏期間を経て発症するため、気付くのが遅れてしまう方も多いです。
肺がん
アスベストと肺がんの関係はまだ解明されていない部分も多いですが、長期的なアスベストの吸い込みにより、アスベストの繊維が肺を物理的に刺激をして肺がんを引き起こす可能性が懸念されています。アスベストの吸い込みで肺がんが発症する時期としては、15年~40年とされており、こちらも肺繊維症と同様にすぐに発症するわけではありません。万が一アスベストの吸い込みがあった場合は、定期的に検診を受けて、医療的なフォローをしてもらう必要があります。
悪性中皮腫
悪性中皮腫とは、悪性腫瘍のひとつです。悪性中皮腫は、肺を取り囲む胸膜、肝臓や胃などの臓器を囲む腹膜、心臓及び大血管の起始部を覆う心膜などに発症すると言われている病気です。万が一発症してしまった場合は、抗がん剤治療や放射線治療を行わなければいけません。特に若い年齢でアスベストの吸い込みがあった人のほうが、悪性中皮腫になりやすいとされています。
アスベスト調査はどうやってやるの?
アスベストが与える人体への影響は、とても大きいことが分かりましたね。アスベストは特に解体する際に飛散しやすく、吸い込みやすいため、リフォーム工事や解体工事ではアスベスト調査が必要な理由も納得していただけるかと思います。では、実際にアスベスト調査の対象となった住宅は、どのようにして調査を行い、また工事までの流れはどうなるのでしょうか。不安に感じている方もいらっしゃるかと思いますので、ここではアスベスト調査について詳しく解説をしていきます。
◎参考:環境省「大気環境中へのアスベスト飛散防止対策について」
https://www.env.go.jp/air/asbestos/litter_ctrl/
アスベスト調査は有資格者が行う
アスベストの調査は義務化されているだけではなく、調査に関わる作業員が有資格者であることも必須条件です。アスベストの調査に必要となる主な資格は3つあり、「石綿作業主任者」「石綿取扱作業従事者」「石綿含有建材調査者」が必要になります。石綿作業主任者はアスベストを取り扱う際の計画立案、指揮監督ができる資格です。アスベストを取り扱う工事が発生する際は、事業者は必ず石綿作業主任者を1人以上選任する必要があるため、石綿作業主任者がいないと工事を進めることができません。続いて石綿取扱作業従事者ですが、労働安全衛生法に基づき、アスベストを取り扱う工事を行う際に資格の取得が義務づけられており、この資格も工事には欠かせません。最後に石綿含有建材調査者ですが、建築物の解体・改修工事を行う前に行う事前調査で、作業員が保有している必要がある資格です。実際にアスベスト調査を行う際は、石綿含有建材調査者が調査を実施します。
事前調査結果の報告を行う
解体工事を行う場合で、一定規模以上の建物の場合は、事前調査結果の報告を行う必要があります。報告は業者が行うことが義務付けられており、報告先としては、該当地域の地方自治体となります。
石綿飛散防止対策をしながら工事を行う
アスベスト調査においてアスベストが含まれていることが判明した場合は、決められている石綿飛散防止対策に則りながら工事を進めていくことになります。石綿飛散防止対策は作業別に対策方法が異なるため、作業に応じた対策を業者が行うことが必要です。周囲への環境配慮も必要であるため、作業内容に関する掲示も行うことが義務付けられています。解体工事やリフォーム工事では、プラスチックシートによる作業場の隔離・養生、HEPAフィルタを付けた集じん・排気装置による作業場及び前室内の負圧化、薬液等による湿潤化などのアスベスト対策を行うことが求められます。
工事は信頼できる業者に依頼しよう!
アスベストを取り扱う可能性のある解体やリフォーム工事は、作業員や住んでいる人に危険が伴うリスクがあるため、作業資格を有した業者に依頼するようにしましょう。なかにはアスベストが含まれている可能性を知りながら、報告が面倒だからという理由でこっそり工事を行うような悪徳な業者もいます。アスベストは危険な物質ですので、しっかりと対策をして工事を行う必要があります。
アスベストの有無が分からない場合はまずは業者に相談を
規定を超えたアスベストが含まれている場合は、アスベストの対策を行いながら工事をしていく必要がありますが、自宅が該当するか分からないという方も多いかと思います。そのため、まずはいつもお願いしている業者がいる場合はその業者に、そうではない場合は屋根や外壁の工事に詳しい業者に相談するのがオススメです。業者によってはアスベストの資格を有している下請け業者に工事を依頼する場合もありますし、業者を紹介してくれることもあります。工事の依頼前には、アスベスト調査を行ってほしいことを伝えると、よりスムーズです。
まとめ
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